「変圧器の効率と全日効率」
本記事では「変圧器の効率・全日効率問題」を解説していく。
効率とは主に「%」で示されるものだ。
「基準に対して、どの程度のものか」を分かりやすく表現した指標である。
もっと簡単にいうと
「効率=出力/入力 ×100」
シンプルだが、これが一番分かりやすい。
さらに下記の2点を押さえるといい。
①変圧器の入力(出力+損失)は何か
②変圧器の出力は何か
効率問題と聞くと厄介なイメージはあるが、これらを押さえることでかなり解きやすくなる。
本記事では問題を解く中で実感して頂きたいと考えている。
変圧器の効率
まずは基本を押さえよう。
「効率=出力/入力 × 100」
変圧器の出力と入力を当てはめる。
※前回の記事で学習した負荷比αをもちいる。(負荷比=運転時出力/定格運転出力)
負荷比αのときの運転効率の式は下記の通りだ。
【ワンポイントアドバイス】
「効率が最大となる運転となる負荷比はいくつか」という問題がよく出題される。
答えを言うと
「分母が最小であるとき」だ。ここまでは理解できるだろう。
では、どうやって分母が最小のときの条件を求めるか説明する。
効率の公式をαで分子分母を割る。
変化するαが点在していると、評価が難しいので式の変換をする。
ここで「最小の定理」というものを使う。
この定理が使える条件は限られているのて注意が必要だ。
※最小の定理※
「2つの数aとbがあり、その積a × bが一定であるならば、a = bのときに、その和a + bは最小である。」
「Pi /α」と「α Pcn」を掛け算してみて欲しい。αが消えて一定値であることがわかる。
これが条件。
条件を満たしていることから、下記のようにαを求めることができる。
変圧器の全日効率
効率の24時間バージョンである。
要は
鉄損は変化しないが、負荷比は時間帯によって変化する問題が多いので足し合わせることになる。単純に24倍していいのは鉄損だけだ。
問題①
変圧器(定格容量80kVA,鉄損300W,全負荷銅損1200W)の定格の1/2負荷運転時における効率(%)を答えよ。力率は90%とする。
解説
負荷比αのときの運転効率の式を使おう。
まず、必要なパラメータを羅列してしまうといい。
α=1/2
P=80[kvA]
cosθ=0.9
Pi=0.3[kw]
Pcn=1.2[kw]
ここまで整理できれば、あとは代入するだけだ。
出力=αPcosθ=36[kw]
損失についても計算すると、0.6[kw]
したがって
η=36/(36+0.6)×100=98.34[%]
問題②
変圧器(定格容量80kVA,鉄損300W,全負荷銅損1200W)の効率が最大となるときの負荷(kW)を答えよ。力率は90%とする。
解説
最高効率になるのは「鉄損と負荷銅損が等しくなるとき」である。
上の最小の定理のところで解説部分がそのまま答えを導く鍵となる。
Pi=0.3[kw]
Pcn=1.2[kw]
を代入すると
α=0.5
したがって
効率が最大となるときの負荷[kw]は
80kvA×0.5=40kW
問題③
変圧器(定格容量80kVA,鉄損300W,全負荷銅損1200W)を1日のうち、無負荷で10時間、定格電流の50%で力率0.9で6時間、定格電流で力率0.85で8時間使用する場合に下記の問に答えよ。
(1)変圧器の1日の全損失電力量[kWh]を求めよ。
(2)全日効率[%]を求めよ。
解説
(1)について
全損失電力量とは鉄損と銅損の和である。
まずはシンプルな鉄損から求めよう。
0.3[kw]×24[h]=7.2[kw]
次に銅損を求める。
無負荷で10時間分は銅損は0だ。負荷電流がないからだ。つまり、6時間分、8時間分の負荷電流が出ているときの銅損を求めよう。
・(0.5)^2 ×1.2[kw]×6[h]=1.8[kwh]
・(1)^2 ×1.2[kw]×8[h]=9.6[kwh]
鉄損と銅損の総和である全損失電力量は
18.6[kwh]
(2)について
全日効率を求めるために下記の公式を使う。
もうすでに(1)で損失部分は求めているので、出力部分(分子)を求めるだけで、この問題の答えを算出することができる。
混乱するので分けて計算していこう。
まずは「定格電流の50%で力率0.9で6時間」の出力は
80[kVA]×1/2×0.9×6=216[kVA]
次に「定格電流で力率0.85で8時間」の出力は
80[kVA]×1×0.85×8=544[kWh]
216+544=760[kWh]
したがって
全日効率の式に求めた値を代入すると
η=760/(760+18.6)=97.6[%]
まとめ
以上「最小の定理・変圧器効率・全日効率のまとめ」となります。
問題解説は現在編集中です。
今回紹介した問題は過去出題された問題たちです。特に良い問題を抽出しました。これらの問題は何度も出題されており、押さえておけば、稀に出題される応用問題も解くことができます。
法規の計算問題で厄介なのは、問題文がいじられるところにあります。使用する公式は同じなので、如何に整理できるかが重要になってきます。
基本問題の意味を理解していれば、対応できるようになるので繰り返し頑張りましょう。(問題③がいい例です)