2019.8.21追記
問題3(日負荷曲線問題)を追記
2019.8.21追記
問題3(日負荷曲線問題)にミスがあったため、修正。
このミスは極めてよく起こるミスだ。そのため、記事としてまとめておいたので注意してもらえればと思います。
【電験法規】日負荷曲線の負荷率計算問題で陥りがちな2つのミス - 電験法規完全攻略
日負荷曲線と負荷率を学ぶ
本記事では「日負荷曲線とは何か」を解説していく。さらに電験でよく問われる「負荷率」を学ぶ。
最終的には電験3種の問題が解けるようになることを目的とする。
法規のB問題でよく出題される分野。
この分野が出題される年度はかなり有利だと自分は思う。
日負荷曲線の問題は応用問題だったとしても、難易度はもう頭打ちになっているのでほぼ確実に解けるからだ。
配点が13点もしくは14点であり、1問あたり7点、6点という高配点になっているため、ケアレスミスには注意が必要だ。
下手をすれば、合否に影響する可能性が出てくるので、確実に解ける実力を身に付けよう。
まずは言葉の定義をきちんと押さえていく。こういったところを押さえておくと、試験問題で躓くことがかなり減る。
日負荷曲線とは
「1日の電気の需要を示した曲線」
かなりシンプルで分かりやすい表現だ。
さらに、下記の図を見て欲しい。昨年出題された「日負荷曲線」だ。
横軸を時間、縦軸を電力需要としたグラフであることが分かる。
要はこういった需要があるので、この時間帯はこのぐらいの電力量が必要になるな・・という予測を立てることができるのである。
高校生ぐらいの方だと「こんな曲線いらんだろ、面倒」なんて発言をする方もいるが、これは必要だ(自分も思っていた時期がありました・・)
需要を把握した上で発電量を決めるし、もっと下流だと、配電線を増設する際などは電力需要を想定して設計を行う。
適当に設計すると、柱上変圧器の容量を超えてしまう可能性が出てくる。以前、送電関係の話を聞く機会があったのだが、大きなマンション一つできるだけでも結構大きな問題になるそうだ。実際に計算するとなると、相当大変そうである。
電験では大抵、需要曲線は3つぐらいなので計算はしやすいから安心して欲しい。
日負荷曲線の定義を押さえたので、次は負荷率を学ぶ。
負荷率とは
「平均電力/最大需要電力 × 100」
こういった指標があることを知っている人は少ないし、なんで必要なのかを知っている方はもっと少ない。
負荷率は「一定期間中にどれくらい消費電力の差があるか」を表す値である。
この値が必要な理由は「負荷の変動を知るため」だ。
この必要性を考えてみよう。
もし、負荷率が低い需要家ばかりだったらどうなるだろうか?
分かりやすく表現を変えると
「数時間だけ電気がいるのですが、それ以外の時間は電気はいりません」ということだ。
発電する側の気持ちになると分かりやすい。
需要変動に対応すべく発電量調整が必要になるのだ。
※変圧器等の設備は最大需要に備えて設置しているということも忘れてはいけない。このあたりは電気代にも反映されている。
日負荷持続曲線
日負荷曲線をもとに直線グラフにしたものだ。
横軸が時間、縦軸が電力であることは変わらないが、電力の高い順にグラフ化した曲線。
一本の直線の場合と折れ線の場合がある。
詳細については問題を解く中で解説する。解きながらの方が日負荷持続曲線は理解しやすい。
問題を解いて知識を使えるようにする
過去問をいきなり解くと、嫌気がさす方もいると思う。自分がそうだったのだが。
そのため、問題レベルをステップアップさせていきます。いきなり電験3種の問題が解ければいいのですが、それよりも段階的に学んでいく方が楽しいし、苦も少ないので。
問題①
ある変電所において、負荷A(最大電力5000kW、平均電力4000kW)に電力供給をしている。負荷率はいくつになるか、答えよ。
解説
「負荷率=平均電力/最大需要電力 × 100」 の公式を使う。
負荷率は80%となる。
これが電験3種の基本問題になる。
この問題のように「平均電力」「最大電力」の数値が直接与えられずに曲線で出題される場合がある。ほとんどは曲線だ。
そういった場合には曲線から平均電力を算出する。最大電力はグラフの一番高い値を読む。一見、難しい電験の問題も分解してみると、意外と解けるものだ。
次のステップに進もう。
問題②
ある変電所において、負荷A(最大電力5000kW、平均電力4000kW)と負荷B(最大電力4000kW、平均電力2000kW)に電力供給をしている。負荷率はいくつになるか、答えよ。
ただし、AとBの最大電力は同時期に起こるものとする。
解説
問題①に負荷が一つ増えた問題だ。
過去問を見ると、負荷が2つ以上の問題が出題されている。
ここでいう負荷率は総合負荷の負荷率を示している。当たり前なのだが、意外と混乱する。
この段階で戸惑うのはポイントは2つある。
・平均電力はどうやって算出すればいいのか。計算方法がわからん。
・最大需要電力はAとB、どっちかの最大の値を使うの?
この2点を押さえれば、総合負荷の負荷率問題が一気に解けるようになる。
複数負荷がある場合の平均電力の求め方は
「Aの平均電力とBの平均電力を足す」
つまり4000kW+2000kW=6000kW。
一方、最大需要電力は
「AとBの電力を足し合わせて最大となる電力」を公式に入れ込む。
今回の問題は最大電力が同時期に起こるという条件がある。そのため、単純に足し合わせることで最大電力を求めることができる。
5000kW+4000kW=9000kW。
以上より、負荷率は6000/9000 ×100=66%だ。
いよいよ電験3種クラスの問題だ。一発で解けるか挑戦してみて欲しい。
問題③
ある変電所において、図のような日負荷曲線を有する3つの負荷A,B,Cがある。
・負荷Aの最大電力5000kW
・負荷Bの最大電力4000kW
・負荷Cの最大電力2000kW
総合負荷率はいくつになるか、答えよ。
解説
最大需要電力は12時~16時であることはすぐに分かるだろう。
負荷A,B、Cを足し合わせると
10000kW
負荷Aの最大電力5000kW+負荷Bの最大電力4000kW+負荷Cの最大電力1000kW
次に、平均電力を求める。
求め方としては
負荷Aの平均電力+負荷Aの平均電力+負荷Aの平均電力で算出する。
負荷Aの平均電力
電力量を24時間分を足し合わせると
4000×8+5000×8+4500×8=108000[kW]
1日の平均を求めるために24で割ると
108000/24=4500[kW]
負荷Bの平均電力
電力量を24時間分を足し合わせると
4000×8+5000×8+4500×8=60000[kW]
1日の平均を求めるために24で割ると
60000/24=2.5[kW]
負荷Cの平均電力
電力量を24時間分を足し合わせると
1000×20+2000×4=28000[kW]
1日の平均を求めるために24で割ると
28000/24=1166.667[kW]
よって、総合負荷の平均電力は
8166.7[kW]
負荷率は
平均電力/最大需要電力 ×100=8166.667/10000 ×100=81.67
従って「約82%」が答えとなる。
問題④
日負荷持続曲線(P=a-bt)があった場合にこの負荷の日負荷率はいくらになるか。
定数は下記の条件とする。
a=2000
b=30
解説
この問題は、曲線の式に定数をまず入れてしまおう。
P=2000-30t
日負荷率を求めたいので「最大需要電力」「平均電力」を算出する。
「最大需要電力」について
t=0を代入することで求めることができる。
2000kWが答えだ。
「平均電力」について
t=0の最大電力とt=24の最小電力を求めて、2で割ることで求められる。(直線グラフなので、最大値と最小値を足して2で割ると平均が求まる)
t=24を代入すると
P=1280が求まる。
2000+1280=3280。
3280/2=1640
したがって、1640/2000 ×100=82(%)
次は日負荷持続曲線が複雑なパターンの問題をマスターしよう。
問題⑤
0時から12時までは日負荷持続曲線A、12時から24時までは日負荷持続曲線Bといった負荷を持つ変電所がある。
この負荷の日負荷率を算出せよ。
日負荷持続曲線A=2000-100t
日負荷持続曲線B=1400-50t
解説
時間ごとに考えていこう。一気に考えると混乱するためだ。
負荷は「時間帯で負荷曲線が違う」というのがポイントだ。
0≦t≦12の期間は「日負荷持続曲線A」
12≦t≦24の期間は「日負荷持続曲線B」
まずはt=0のときを考える。
日負荷持続曲線Aにt=0を代入すると
2000kW。
次にt=12のときを考える。
日負荷持続曲線A=2000-100t=800
ここで負荷は日負荷持続曲線Bに移り変わる。t=12を代入する。
日負荷持続曲線B=1400-50t=800kW。
次にt=24のときを考える。
日負荷持続曲線B=1400-50t=200kW。
以上の値を使って
「最大需要電力」「平均電力」を求めて、日負荷率を算出する。
最大需要電力は「t=0のとき」なので
2000kWだ。
平均電力は「日負荷持続曲線Aの平均」と「日負荷持続曲線Bの平均」を足し、2で割ることで求めることができる。
【日負荷持続曲線Aの平均】
最大値2000で最小800であるから
(2000+800)/2=1400
【日負荷持続曲線Bの平均】
最大値800で最小200であるから
(800+200)/2=500
全体の平均電力は(1400+500)/2=950。
よって日負荷率は
950/2000×100=47.5(%)
まとめ
以上「日負荷曲線・日負荷持続曲線、負荷率を極める(8日目)」となります。
電験3種の法規計算は、学校で勉強したことがない、もしくは授業では一瞬で終わってしまったという方が多いです。
当然、慣れない計算になるので苦戦する人も多いです。今回は電験3種レベルに到達するまで5問用意しました。
1問目から2問目、2問目から3問目とステップアップする中で、計算で必要となるポイントが見えてくると思います。そこを掴んでもらえれば、かなり実力・応用力が身につくと思います。
ややこしい分野は今回のようなステップアップ形式で問題を解くような資料を配信するようにします。
日負荷率計算は解ける!といった具合にできる分野を増やしていって欲しいと思います。