2019年7月27日追記
問題解説を追記しました。
「有効落差」と「年間利用率」
本記事では「有効落差問題」に加えて、もうワンステップ進化するために「年間利用率を求める問題」をマスターして頂く。
水力発電所出力の公式は何度も活用してきたことで、少しずつ覚えることができてきていると思う。
今日もまた「有効落差」と「流量(使用水量 m3/s) 」を使い、問題を解いて欲しい。
ただ今日2問目で紹介する問題はあまり馴染みのない問題でもある。
「年間利用率」を私生活で算出することはまずない。仕事ですら計算したことがない人がほとんどだろう。
しっかりと言葉の意味をとらえて、自分のものにして欲しい。
使う公式
使う公式は「水力発電所出力の式」だ。
P=9.8HQ× ηw × ηg
・有効落差:H
・流量 :Q (m3/s)
・水車効率:ηw
・発電機効率:ηg
この出力の式に時間をかけて「電力量W(kW・h)」にする。
1時間あたりだと
W=P×3600÷3600だ。
W=P [kW・h]
※割と重要で、つまづく方は多い。
次に、年間利用率の考え方だ。
「年間最大可能発電電力」と「年間発電電力量」が重要になる。
年間利用率= 年間発電電力量/年間最大可能発電電力量
式を見てもピンと来ないかもしれないが、実際の発電所は常にフルパワーで発電しているわけではない。系統側の都合によって、出力を落として運転している場合がある。またトラブルによって、70%出力運転をしている場合もある。
公式を自分の言葉に直すと
「実際、発電所をどれだけ使いこなすことができたか」
この表現が自分の中では一番しっくりくる。
それでは問題を紹介する。
問題文を見る中で「こんな感じで問われるのか」と感じ取って欲しい。 年間最大可能発電電力の計算の仕方にも慣れてほしい。
有効落差を求める問題
貯水池式発電所で、最大出力98MWを発電するために必要な有効落差[m]はいくつか。(使用水量は25[m3/s] 水車と発電機効率は80%)
解答
答えは 500[m]。
発電出力公式を変形することで、有効落差を求めることができる。ただ注意すべきは「MW」だ。公式では「KW」なので1000倍してやる必要がある。
【補足情報】
厳しいことを述べる。
不快にさせてしまったら大変申し訳ないが、事実なので伝えておく。
この問題ができたからといって「安心しないで欲しい」
この問題は基本中の基本の問題。
電験講座のテキストであれば、大抵が記載されている。
だが「講座受験者の電力合格率50%を切る。それどころか、もっと低い年すらある」
つまり、何がいいたいかというと
「この問題を解けることは合格に直結しない」ということだ。
次のような応用問題を解けることが重要。公式を覚えるための問題と思ってもらえるといい。このあたりを教えてくれない講座は多い。
年間発電電力の問題
最大使用水量10m3/s、有効落差100mの水力発電所がある。水車・発電機の総合効率が90%であるとき、発電所の出力[kw]はいくらか。また、年間発電電力量が54000MW・hであるとき、この発電所の年間利用率は何%か。
解説
答えは「69.6%」だ。
この問題では年間発電電力量が与えられている。
そのため、年間最大可能発電電力量を求めよう。
P=9.8×100×10×0.9=8820[kW]
W=8820×24×365=77263200 [kW・h]
年間利用率は
54000000/77263200 ×100=69.92 [%]
まとめ
以上、過去問を20日で攻略「水力発電所の年間利用率を求める問題」(3日目)の記事になります。
今回紹介した問題は大きい数字を計算機で計算することになり、ミスをする人が必ずいる問題でもあります。
必ず一度は自分の手で計算機を叩きましょう。
また有効落差の問題で厳しいことをお伝えしましたが、過去問を見ると気付く紛れもない「事実」です。
基礎問題はきっちり理解することが大切ですが、早い段階で応用問題にいく必要があります。
合格に直結する道は基礎問題を押さえることに加えて、応用問題が解けるようになることでしょう。ただいきなり応用問題を解くことはできないので、基礎問題と応用問題の真ん中くらいレベルの問題を解くことが有効です。
そういった問題を中心にピックアップしていきますので、ぜひ知識を習得してもらえればと思います。
法規計算問題4日目に進む